読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

野ブタ。をプロデュース(4)

野ブタ。がラヴレター?をもらった。ぎょっとして下駄箱のまえで腰を抜かす野ブタ。こっそり中身を見た場所が、誰もいないじめじめした薄汚い校舎の裏口であるところがいかにも野ブタ。らしい。差出人はシッタカ。彼は最近野ブタ。に?萌える?ものを感じてしまっているらしい。外でもないが、草野も本格的に野ブタ。に恋してしまった一人。胸が苦しくて、学校へ行きたくないなんて、完全に本物である。

教室へ入ろうとする野ブタ。だが、すでにシッタカは自分の席で野ブタ。の来るのを、今か今かと待っていた。入り口でシッタカの視線に気づき硬直する野ブタ。逃げるように後ろの入口へ回ってしまう。シッタカは拒否られたのだ。

今の不審な挙動に、勘のいい修二は早くも気がついてしまう。シッタカが野ブタ。にLove? えーっ!

屋上でのプロデュース作戦会議。だが、何故か草野の影がない。あまりに滑稽だが、せつない。草野は野ブタ。を意識するあまり、近くに行けないのだ。昨日までは平気だったのに。

野ブタ。への修二のひと言のアドヴァイスが、草野には爆弾発言に聞こえる。

いいか。野ブタ。おまえ恋愛しろ。おまえ恋愛いいぞ。お肌つるつるになるし。

それを聞いて野ブタ。は一通の手紙を修二の前に出す。シッタカのラヴレターだ。

私、恋愛なんて、無理です。

けれど修二だけはノリノリである。プロデューサーがこうではもう止まらない。

シッタカに話を聞いた。

最近、ちょっと野ブタ。がいい感じに見えてきたって言うか。

そう思うか。俺も実はそう思ってたんだ。それじゃ、俺とまり子といっしょに、ダブル・デートしようぜ。

廊下で、シッタカと出くわす野ブタ。シッタカが一歩近寄る。すると、野ブタ。は一歩後退。

さらに一歩彼が前進すると、先を読んで野ブタ。は二歩後退。

シッタカが三歩近づくと、野ブタ。は耐えきれずに反転、逃げて行ってしまった。

修二、俺、小谷に嫌われてる。

いや、そんなことないって、ただ恥ずかしがっただけで、心の中ではおまえにLove だよ。

え?誰が誰を好きだって?

ふたりの会話が仲間にばれて野ブタ。とシッタカのことはクラス中に知られてしまう。

いまシッタカが小谷にフラレてたじゃん。

いや、振られたんじゃないの。ふたりはこれからなの。

と、修二がフォローすると、

え? じゃあ、俺、これからふられるの?

と、シッタカ。板東までが、

シッタカ、おまえレベル低すぎ。女の趣味悪いんじゃね?

帰りみちの野ブタ。ら三人組。

シッタカは本気なんだよ。おまえ人の好意を無視するわけ? ここはデートするのが筋ってもんだろ?

うなずく野ブタ

よし、頑張ってデートしよう。

そこへ割って入る草野。

やだ! それはいやだ。スケベ。

そこに奇怪な笑い声のようなものが響きわたる。

この声聞くと不吉なことが起きるってよ。デートは上手くゆかないね、きっと。

この不吉な笑い声、隅田川高校の夜の校内にも響きわたった。教師たちはおののきながら、

この声教頭先生の声に似ていませんか。

先生もそう思われますか。実はぼくもずっとそう思っていたんです。

不吉なことがなければいいが。

去年の2‐Cの警察沙汰。思えばこの声の直後だった。と校長が回想。すると、突然校内の明りが全て消えた。パニックに陥る教師たち。

翌日、修二が野ブタ。に?女の子の媚び方指導?を始めた。が、草野のお蔭で野ブタ。の意識改革は難航、ちっとも進展しない。

まり子と話しながら、はちみつレモンのジャムの蓋を開けようとする修二。ダブル・デートでまり子に野ブタ。の引き立て役を演じてほしいと言うのだ。その話を聞きながら一向に開けられないジャムの蓋を、

ちょっと貸して。

まり子は苦もなく開けてしまう。こういうとこ、ほんとうにまり子って女の子だなあと思う。

わかった。そういうことなら任せといて。うんと悪い女演じてあげる。

修二とデートの計画で盛り上がるのを、心から嬉しそうに相手をするまり子。まり子って何て女の子らしいやさしさにあふれた子なんだろう。けれど、まり子の想いを考えるとたまらなく切なく、哀しい気持ちになってしまうのは何故なのだろうと、ぼくは思う。

デート当日。料理上手な修二の作った弁当を包み、準備万端整った野ブタ。と修二は、意気揚々と出かけてゆく。部外者の草野は、やけっぱちの気分。

デートの出で立ち。野ブタ。のファッションは例の服があるので申し分ないのだが、どうにも足りないのは年頃の娘らしい弾むようなしゃべり方、仕草。

さて、みんな揃ったからデートの開始。それが気になってしかたのない草野が変装して尾行。

きょうは楽しかったです。

顔を見るなり、練習してきた締めのあいさつをいきなり言ってしまう野ブタ

そう。そういうデートにしたいんだよね。修二が優しくフォローして事は収まった。

まずはショッピング。まり子は金遣いの荒い女を演じようと、懸命。でも、修二との初デートみたいなものだから、最高にときめいてもいる。デートの最中、修二が手を握ってくれた。感激で口もきけないまり子。それを見て野ブタ。も頑張ろうと、シッタカの袖口をつかもうとする。

そこへ神出鬼没のゴーヨク堂店主、デルフィーヌが手押し車を押しながら登場。尾行の草野にわけのわからない昆虫図鑑を売りつける。むむむ、定価、1億円???

ランチタイム。野ブタ。のかわいいお弁当に対し、まり子のはまるで弁当どころか?餌?。まり子、悪い女を演ずるにも、程度というものがあるよ。

そのあと野ブタ。らと別れる修二とまり子。銀座で買い物ということだが、もちろん嘘。まり子は修二のことを「小谷さんのお父さんみたい」と嬉しそうに言う。片やシッタカは気を利かせて飲み物を買いに行く。そのわずかな間に、野ブタ。は、あのポーズ。?野ブタ。パワー、注入!?

その頃、修二とまり子はモノレールの駅にいた。

きょうは楽しかったです。

満面の笑顔で言うまり子。まり子にとって、もしかしたら今までの人生で、いちばん幸せな日だったのかもしれない。それを思うとたまらない気持ちになるのは何故なのだろう。

その言葉、何のことだか理解できていない修二。ふたりの間には?心のキャッチボール?がまったく成立していないのである。

心こもってなかったかなあ。

そう言って反省の態度を見せるまり子だが、そうじゃない。

まり子、そういう問題ではないんです。ふたりの心のすれ違い。このモノレールを待つ時間の切なさ。まり子の気持ちを考えると涙なしには見られない名場面であった。まり子が哀れで哀れで、涙が止まらなかった。こんな性格のいい最高の娘を何故修二は受け止めてやらないのだろう。

一方、水族館でのデートでお互いの心の距離を少しずつ縮めてゆくシッタカと野ブタ。巨大水槽の前で、ブライアン・デ・パルマの話をするシッタカ。シッタカにとって一番得意な話だろうが、その後に場面は暗転する。

水槽の前で魚を写生していたご老人が突然、嘔吐しながら倒れたのだ。思わず駈けつける野ブタ

大丈夫ですか。あの、救急車呼んで下さい。

わかった。

草野が飛び出して119へ連絡。野ブタ。は苦しんでいるご老人の口の周りを指で拭ってやった。

私のカバン、取って。

シッタカが駈けよって手渡そうとするが、その瞬間、野ブタ。の嘔吐物にまみれた手が触れた。

汚ねえ!

思わず野ブタ。の手を振り払い、バッグをとりおとすシッタカ。

彼が、私の手を汚いと言った。

必死に弁解しようとするシッタカだが、不意のひと言に深く傷ついた野ブタ。の心はもう戻らない。何てひどいことを言うんだろう。

救急車の中。野ブタ。と草野は付き添いで同乗。その頃シッタカは水族館で呆然としていた。

車内の野ブタ。はまだショックに打ちひしがれている。草野が野ブタ。の手を自分の頬に当てた。さっきまで嘔吐物まみれだったその手だ。

全然汚くないだっちゃ。

ね? よく見て。こんなにやさしい手がありますか。

病院。草野にあやまる野ブタ

デート、台無しにしてしまって、ごめん。上原さんまであんなに頑張ってくれたのに。期待に、応えたかった。成功させて、みんなにありがとうって言いたかった。

看護師さんが駈けよってきた。

お爺さんね、お酒の飲み過ぎだったみたい。もう普通にしゃべっているから大丈夫よ。

病院を出た。空の青さが目にしみた。野ブタ。がこんなことを言った。

キャッチボールしたいような空。

心のキャッチボールがしたい。野ブタ。は切実に思った。受けたボールをちゃんと投げ返せるようになりたい。

翌日、学校は大変な騒ぎになっていた。野ブタ。を中傷するビラが学校中に貼られていたのだ。一枚ずつ回収する野ブタ。彼女に動揺している様子は感じられない。けれど、登校してきたシッタカにはもう打ち解けた態度はできないのだった。修二は言う。

シッタカも反省しているし、こんな中傷ビラにはびくともしないし、許してあげなよ。

野ブタ。はそういうことが言いたいのではなかった。

好きでもない人と付き合うのは、自分を偽ることだからよくないと、思う。

だって、人気者になるためだよ。そうだろ?

自分に嘘つくくらいなら、人気者になれなくてもいい。

じゃあ、勝手にしろよ。

でも噂はそれだけではなかった。まり子が外見とは違って大変わがままな悪い女だという話が、学校中に広まってしまったのだ。だが、当のまり子はまったく気にしていない。

私のことは修二がちゃんとわかっていてくれるじゃない? 私にはそれで十分。他には何もいらないの。

いい子だなあ、まり子。何ていい子なんだろう。

下校時、校庭の木の上から飛び降りるキャサリンを見た修二。あ、あのキャサリンそっくりの笑い声が聞こえた。

とうとう捕まえたわ。このはた迷惑な鳥!

鳥籠をのぞくと、

九官鳥じゃないですか。

私が鳴いているなんて噂立てられて、迷惑ったらありゃしない。

なんだ、ほんとうに鳥だったんだ。

冷静な桐谷修二も噂ごときに惑わされたかね? こんな紙切れにも惑わされているのかな? 桐谷よ、こんなものはな、ただの紙切れなのだ。振りまわされるだけバカげているじゃないか。

草野に逢った。

ちょっと顔かして。

ねえ、あそこ見て。野ブタ。だよ。あいつの後つけてるの。

あれ、あれ。あそこで、タロ吉(犬)相手に笑顔の練習すんの。

で、神社の神鈴の前でふかく頭を下げるの。

それから八百屋で、買いもしないのに野菜を丹念に眺めんの。

そんで、花屋の前で花屋のおばさんに挨拶。

この花、かわいいです。

あんただってかわいいわよ!

わかる? 野ブタ。ってね、こんな毎日のささやかなものを大切にしている女の子なんだよ。

そして、非常階段のところで?花の街?をうたいながら、きょうのビラを細長く千切ってる。修二、俺たちってさ、野ブタ。のこと何にも知らなかったんだよ。それどころか、知ろうという努力すらしてこなかったじゃない? 野ブタ。の願い。聞いたことある? いつか人気者になって、修二、お前に「ありがとう!」ってひと言言いたいんだってさ。

野ブタ! 修二くんがお前に話だって。

俺やっぱり、お前を人気者にしたい。そして普通の女の子みたいに、ほんとにくだらない話で屈託なく笑うところを見たいんだよ。

ビラを丸めた紙つぶてで野ブタ。とキャッチボールを始める修二。

デートは、思わぬところが突破口になって、思いもしない方向へなだれ込んでいった。

蒼井(柊瑠美)の登場である。

小谷さん、あなたが助けてくれたひと。私のお祖父ちゃんなんだ。

そ、そうなんだ。

ありがと。今度おじいちゃんのところに逢いに来てあげてよ。おじいちゃんきっと喜ぶから。

野ブタ。に友だちができた。黒い陰謀の主の正体はまだわからない。でもあんな奴には負けたくない。そう強く思う修二だった。